疫病を祓う長刀天を突く
迎え火の風少し出ておがら燃え
車より絽の袈裟ひらり院主様
五山の火浄土へ君はゆらゆらと
夏がゆく群青の空雲泳ぎ
長茄子を夕餉の支度煮浸しに
9月
宵月夜ひとり鍵開け通夜帰り
主亡き家に夕陽の秋扇
着ては脱ぎ初秋の風に遊ばれて
ひとり居に夜の客ありいぼむしり (カマキリのこと)
首筋に雨のしづくの冷ややかな
11月
熱闘に月も弾むか甲子園
豚汁の三日目野菜みな丸く
植木屋のハサミ軽やか天高く
秋うららバス待ちながら懐メロを
老友の赤ヘル走る照る紅葉
運転手紅葉の色を嘆くなり
12月