ばら俳句 作品集 6

2023年

疫病を祓う長刀なぎなた天を突く


迎え火の風少し出ておがら燃え


車より絽の袈裟ひらり院主様


五山の火浄土へ君はゆらゆらと


夏がゆく群青の空雲泳ぎ


長茄子を夕餉の支度煮浸しに


          9月

                             

宵月夜ひとり鍵開け通夜帰り


主亡き家に夕陽の秋扇


着ては脱ぎ初秋の風に遊ばれて


ひとり居に夜の客ありいぼむしり (カマキリのこと)


首筋に雨のしづくの冷ややかな


          11月


熱闘に月も弾むか甲子園


豚汁の三日目野菜みな丸く


植木屋のハサミ軽やか天高く


秋うららバス待ちながら懐メロを


老友の赤ヘル走る照る紅葉


運転手紅葉の色を嘆くなり


          12月

   

2024年

大掃除手伝うらと牡蠣ご飯


年の暮れすべ無き友の病知る


煮しめの香満ちていっぷく大晦日


元旦に逃げての文字とアナウンス


焼け焦げた跡覆うか雪しんしん


松の内明けてゴミ出し気も新た


寒椿あや無き庭の女王様


          1月


             

被災地に情け行き交い雪温し


笑む君の睦月は米寿だったのに


福豆を重ねた歳は食べきれず


如月の風強く友ホスピスへ


ひとり居の唇に歌春まじか


友よ逝く神は意地悪ひな祭り


翔平の佳き日ことほぎ春うらら


ダウン手にすぐそこの春みえかくれ


冬が行く君と見た梅よとせ過ぎ


          3月


                                             

お花見や紅でもひこかうっすらと


我が誕生日薫風に身をゆだね


筍飯母の味には程遠く


芍薬や株分けくれし友は今


名も知らぬ花いじらしき草むしり


水羊羹供えておりん澄んだ音を


横綱の口惜しそうに汗ぬぐう


          5月

2024年

ランチ会十薬の路空きっ腹


さくらんぼ艶やか放ち唾を飲む


色変えぬ白紫陽花の潔し


夏の空ペットボトルの開けにくき


雨降って喉潤すか紫陽花よ


          6月


                                                                        

足取りも祇園囃子のコンチキチン


祇園会や民の祈りを鉾に乗せ


横綱のでっかい背中大団扇


夫の夏群青の海描き遺し


パリの夏努力の涙勝負なし


          7月


                         

送り火やおがらの煙闇に消え


夫好み精進揚げを盆の膳


疎開地の千葉の荒海幼き日


若人の汗も混じりて吹奏楽


うなだれる供花くげにひとかけ夏氷


          8月

                    
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