ばら俳句 作品集 2

2021年

去年(こぞ)君が 蒔きし寒肥真似て蒔く


君のため もう買う事無い冬物セール


寒スズメ  暇もて遊び餌付けして


冬ぬくし 幼なじみの声沁みて


立春も 独りを友に自粛中


窓越しに 覗いてくれる ちょっと春


たわいない メールに笑って 春を待つ


君植えし スミレほころび 胸熱く


咲き初め 紅梅ひと枝 仏前に


二度と来ぬ 君と眺むる 庭の梅

   

2021年

嬉しくも 悲しくても 春爛漫


亡き夫を 想えば桜 なお淡く


はざくらの 緑輝き まぶし朝


春惑う 病院の予約 二年さき


春光に まどろむうちに 日が暮れて


          4月15日


春の雪ふんわりかぶってなんじゃもんじゃ


集まりし帰る送る春の月


草むしり軍手に君の温もりか


母の日に届きし紅い花君と


貰い物青虫ついて春キャベツ


          5月20日


ワクチンの帰り青梅地に転び


清白せいはくに咲いてどくだみ名の不思議


仏前でため息ひとつ梅雨の朝


新茶届きあの世とこの世一服し


友急ぎ永遠に眠りし万緑に


          6月17日

   

2021年

梅雨に舞う舞妓のマスクいとかな


沙羅の花落ちてもなお苔の上


悠久の空に舞い散る夏椿


背を丸め青芝刈る君幻か


          7月15日


植木屋の汗にまみれて明日大暑


二度目なる東京五輪夏がゆく


勝者なる若武者汗を涙なし


迎え火や見えない君に手をあげて


五山の火君よ浄土へただ祈り


          8月19日


庭出れば蚊との戦い負けいくさ


起きぬけの水ひんやりと秋涼し


筆談で皆によろしく逝った秋


一周忌君の墓石に秋の雨


いちぢくをうまそに食べた君はもう


          9月16日


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