ばら俳句 作品集 3

2021年

香り散る金木犀とバス停へ


こんがりと一匹だけの秋刀魚焼き


友よりて笑って帰る萩の暮れ


秋晴れの穏やかなれどなを寂し


煌々とこよい満月願いこめ


          10月21日


冬物を引っ張り出すも秋うらら


長き夜を眠れぬままに白む朝


深む秋日々を重ねて照りもみじ


庭に咲く小菊供える朝ひとり


西山の紅葉夕焼け胸紅く


          11月18日


我を見よ言わんばかりの大銀杏


寒空に耳に残りしお帰りと


師走とて身体動かず又あした


湯どうふの湯気にゆらり君映り


病院の聖なるツリーに祈りこめ


          12月16日

   

2022年

夕暮れに第九聴きつつ鍋に火を


冬至の湯皮むきかけの柚子浮かべ


君逝けど年の瀬刻む腕時計


息白くタスキ繋げる子らまぶし


ほっとする幼なじみの賀状手に


          1月20日


万両に冬の陽ざしよ赤赤と


鬼は外心のモヤモヤ豆に乗せ


福豆八十路の数は無理となり


母(義母)荼毘にみそとせ(三十年)前の雪降る日


寒き夜に淋しさ友とスマホ手に


世の常か王者も敗れ冬五輪


努力咲き泣いて笑って氷上に


冬の陽にもみ殻まくら母想う


むなしくて見上げる夜空月冴えて


つい涙読みし新聞冬の陽が


猫の日に庭の片隅手を合わせ


冬すみれ少しの陽ざしに花開き


蕗の薹みつけし笑みの君想う


うす赤くぼけのつぼみに風光る


友手向け水仙かぐわし仏の間


寒空にトゥナイト懐かしシネマ観に


古びたり母から孫へお雛様


カチューシャの国戦かえり雪ちらついて


雪のなか戦のニュースなぜ悔し


こ(娘)や孫(孫娘)と離ればなれの雛のすし


          3月 4日

   

2022年

しだれ梅おやこ(母娘)で参る念仏寺


渡月橋娘と君を偲ぶ春


山笑う君描き遺す愛宕山


母と娘(こ)が春をゆく君かぜになり


愛らしく梅咲き競う天神さん


君の部屋雨戸開けたの春だから


ゆすらうめ蕾にあめが冷たかろ


武器棄ててカチューシャの歌サー謳(うた)え


春彼岸花とお酒と手を合わし


君往きて二度めもさくら涙色


          3月31日

                                                              
Copyright(c) 2022 RoseHaiku All Rights Reserved. Design by http://f-tpl.com