ばら俳句 作品集 4

2022年

花冷えに吾子の納骨終えし友


はかなくも緑芽生えて花吹雪


春の宵ひとり笑った後虚し


離れしも快方願う春日より


おぼろ月地球のいくさ忍び泣く


鳥居背に命燃やすかキリシマツツジ


          4月27日


      

薫風に八十路迎えてあるがまま


カーネーション贈れるものなら亡き母に


青葉雨病室の友なに思う


風光る振り袖すがた孫まぶし


万緑に友の朗報はれ晴れと


みどり濃く患う兄の声薄く


芝を刈る電気バリカン君おも


          5月25日

                

2022年

友よりの新茶含みて若き日が


大空の涙こぼれて梅雨入りか


慈雨浴びてこうべをたれる紫陽花よ


庭の草生き生きのびて梅雨うらむ


父の日に仏花はなやかの祈り


オータニが梅雨かっ飛ばすホームラン


          6月23日


                                                  

水無月は京で出合いし夏の味


草ひいてノンアルコール喉にしみ


七夕の星ものがたり夢うつつ


夏の曇あか旗掲げロシア兵


鱧おとしビールごくんと笑み残し


夏悲し銃口いのち若者も


          7月19日

                                                          

2022年

糠漬けのきゅうりポリポリ母恋し


友と分け小玉スイカの甘きこと


手を拭いて八月六日黙祷し


心込め長崎の鐘歌う夏


盆参り手合わす孫も大人びて


おぼろげに終戦の日は疎開地で


彼の世へと送り火こよい我ひとり


          8月22日

          

瑠璃色の地球こわして夏もゆく


さるすべり猛暑なによと華やいで


秋の寺読経せつなく三回忌


名月に友の回復手を合わし


すだれ越し八十路の頬に今朝の秋


何となく敬老の日のわびしくて


          9月27日

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